昨日、Wish2009というイベントが開催されました。これは、「ウェブの未来を担う可能性を発掘・共有・応援しようというイベント」。ウェブ関連サービスや端末を開発している企業・個人がプレゼンテーションを行い、その知名度を高め、飛躍するきっかけを与えようという企画です。
このイベントに便乗し、私自身がこれから作ろうと考えている企画について書いてみようと思っていたのですが、間に合わず。遅ればせながら、エントリさせていただきます。
…いや、この「エントリ」はアレですよ。ブログのエントリという意味。Wishにはそのうちエントリされれば幸いです。
(以下、本題)
Webのパーソナル化
現在、Webサービスの流れはメディアの個人化、すなわちパーソナライズの方向へ進もうとしています。
AmazonやiTunesStoreといったショッピングサービスは、顧客の購買動向をデータベース化し、その趣向に合わせた画面を自動生成、商品をレコメンドする仕組みを導入しています。動画サービスのYoutubeや検索サービスのGoogleも、ユーザーの行動を分析して最適なコンテンツを提供するサービスを徐々に展開しつつあります。
また、ユーザー側も、自ら使用するサイトのレイアウトやコンテンツをカスタマイズし、自分で使いやすいように再構築するのが当たり前のようになってきています(iGoogleやFriendFeedなど)。
それと同時に、ネット上での表現方法も個人的な場で個人的に行うケースが目立ってきました。最も典型的なものはミニブログとも言われているTwitterですが、それ以外にも携帯サイトのプロフやiddyなどの自己紹介も、こうした個人的な場での個人的な表現と言えるでしょう。
もっとも、そうしたパーソナライズは今に始まったことではなく、インターネット黎明期(もうちょい後か?)から長く続いてきているブログサービスも、間違いなくパーソナルなものと言えます。現在のミニブログや自己紹介サイトは、ブログの機能を簡略化し、部分特化したものと言えるかもしれません。
パーソナライズが得られないモノ
さて、パーソナライズが進むにつれて、Webサービスがますます身近なものになり、親しみやすくなったのは疑いようもありません。しかし、実際どうでしょうか?
見ず知らずの人の自己紹介なんてそれほど興味も湧かないし、Twitterのつぶやきも、ごく限られた人とのやり取りの繰り返し。しかも、同じ趣味だとか同じ仕事だとか、あるいは同じ地域といった、狭い領域の中でのコミュニケーションに過ぎません。
ブログは、かろうじてトラックバックと検索エンジン、そしてソーシャルブックマークなどによって繋がっています(ただし、これはごく一部のブロガーに与えられる恩恵)が、自己紹介はそのほとんどが孤立し、ミニブログは一瞬だけ繋がったように見えて消滅していく運命にあります(ゆるいので)。
インターネットの素晴らしいところは、世界中のほとんどあらゆる国の人々と繋がっていて、マイノリティの声でも世界中に届くことと言えるでしょう(少なくとも、可能性を持っている)。しかし、そのコンテンツのほとんどは、人目に触れることなく消えているのが現状。さらに、言語の壁は、絶望的なほどコミュニケーションを分断しています。
では、何がいけないのか。今のWebに何が足りないのでしょうか。
つなぐためのプラットフォーム
答えは、つなぐための機能が不十分であること。
GoogleやAmazonは秀逸なコンピュータアルゴリズムによってユーザーの意図・趣向を分析し、最適な解を導き出そうとしますが、ご存知の通り、あまり適切な結果を出してくれません。
自己紹介サイトは、その人の趣向や性質を表現したキーワードをタグとして紐づけ、キーワードからそこにたどり着くことが可能です。しかし、キーワード単体が表現できるその人の趣向・性質には限界があり、それを根拠にしたつながりは極めて一面的かつ限定的でしかありません。
例えば、「自転車」が好きで「東京都」に住んでいる「30歳代」ということはわかっても、何のために自転車に乗っているか(利便性か健康かスポーツか)とか東京が好きか嫌いか、充実した30歳代かどうか、などはプロフィールの詳細(自由記述欄)を観なくてはわかりません。当然、それを根拠としたつながりを見つけ出すことは極めて困難と言えます。
さらに言えば、自分自身の人格を的確に表現できる人などほとんどいませんし。
ミニブログに関して言えば、これはほとんど偶然のめぐり合わせに頼らなくてはなりません。
ハッシュタグやフォローのつながりを元に発見した誰かのコメントが、たまたま自分の感性をくすぐったり、考えが合致したりしてフォローを始めてみることがあります。しかし、継続してその人のコメントを読み続けていると、実は全然違った、などということもあるのではないでしょうか。
当然、逆もまた然りです。実はとても気の合う相手かも知れないのに、最初にめぐりあった一言が気に入らなかっただけで、つながる機会を逸してしまいます。
中には、特定キーワードを発したユーザーを、自動的に追尾するbot(もしくはbotのようなユーザー)なども見られますが、これがほとんど意味をなさず、鬱陶しいだけの存在であることは言うまでもありません。
ハイパーマインドプラットフォーム
そこで考えてみたのが、キーワードの関連性を重視したパーソナライズ支援機能です。
キーワード同士を特定の関係性定義でつなぎあわせ、明確なリレーショナルキーワードマップを構築する。つまり、マインドマップを作るのです。
ここで、思いつくのは「ソーシャルマインドマップ」という言葉です。実際、ソーシャルマインドマップ的なWebサービスは存在していますし、マインドマップを共有するという意味では面白い試みだと思います。
ただ、私が考えているWebサービスは、これと似て非なる物です。
それは、マインドマップの生成が、あくまでも結果であって、目的ではないこと。私が作ろうとしているサービスの目的は、利用可能なデータベースの構築であって、自己分析の道具ではありません。
言い方を変えるなら、ソーシャルマインドマップのような機能があっても良いが、それは一つの形でしかないということです。
メディアとしては、ブログサービスでも良いし、SNSでもかまいません。ゲームのような形態も考えられます。そのようなメディアを運用する中で、自然とマインドマップが生成されるようなシステムを設計するのです。
つまり、プラットフォームを構築し、APIを配信することによってサードパーティ製のWebサービスからマインドマップデータを収集するのです。もちろん、サードパーティはこのデータを利用することが可能。これは、Twitterのエコシステムに近いものを想定しています。
それは、もはや「ソーシャルマインドマップ」という一つのメディアに収まる物ではなく、「ハイパーマインドプラットフォーム」とでも言うべき強力なプラットフォームになるはずです。
実用レベル多言語プラットフォーム
もうひとつ重要な点は、このサービスの基本言語を英語とすることです。
もちろん、日本人の繊細な感性は日本語でしか表現できません。しかし、英語を基本とすることで得られるメリットを考えれば、そのような日本語のメリットは些末なことでしかありません。
ここで言う英語のメリットとは、一つにインデックスのし易さ。英語は日本語に比べて曖昧さの少ない言語であり、また使用バイト数が少ないことやスペル補正が容易であることからもインデックスするのに向いています。
もう一つは、翻訳のし易さです。英語は、事実上世界の公用語であり、あらゆる言語から直接翻訳が可能です。少なくとも、APIなどを使用する場合、それは絶対です。例えば、英語→日本語やヒンドゥー語→英語は可能でも、ヒンドゥー語→日本語を実現してくれる翻訳APIは見たことがありません。
ここで、「翻訳なんてできるの?」という当たり前の疑問がわいてくると思います。確かに、Google翻訳の惨憺たる翻訳結果を見れば、自動翻訳なんて未来の夢物語だと感じるかもしれません。しかし、ここで翻訳するのはキーワード。独立した単語だけを翻訳するのならば、それほど難しいことではないはずです。もちろん、それでも誤訳は発生しますので、人力による補正にも多少は依存することになりそうです。
こうして、英語をベースとしたシステムが作られれば、今度はそれを他言語に変換し、世界中の人たちが同一のフォーマット上でマインドマップを作成することができます。そして、英語を解して、あらゆる言語同士で結合と比較が可能になるのです。
そして、結局何ができる?
一言で言えば、世界中の人たちの意思が集まった巨大なマインドマップができます。大げさな言い方をすれば、人類意思の結合体みたいなマインドマップです。
そして、それぞれのクラスタ(ユーザー属性)に分けることにより画期的な比較が可能になります。例えば、アジア人とヨーロッパ人の比較、キリスト教徒とイスラム教徒の比較、男性と女性の比較。
そのような比較をすることにより、マーケティングや学術的な分析に利用できることはもちろん、何よりも、自分と他人の共通点と差異点を自覚することにより、相互理解を深める手助けになるのではないかと期待しています。
世の中の多くの争いごとは、相手への理解と配慮を欠き、自分と他人の差異を認められないことに起因しています。民族紛争から家庭内の喧嘩に至るまで、ほとんどの争いの原因はこれじゃないでしょうか? 「どうしてオマエはわからないんだ?!」と。
自分と他人が違うことを知り、それでも通じ合えるものが見つかったら、それはとても素晴らしいことなんじゃないかと思います。
もっとも、一番有効な使い方は、出会い系サイトなどで相性のいいパートナーを見つけることなんでしょうけどね。
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