2009年10月19日月曜日

Twitterのこれから〜twup2009に参加して思ったこと(後編)

先行き不安なビジネスモデル

ユーザー数を順調に伸ばし、マスメディアへの露出も増えて何かと話題のTwitterですが、その経営については以前から懸念が囁かれていました。サービス自体が無料なのはもちろん、投稿されるコンテンツに何らかの価値があるわけでもありません(私のつぶやきも含めて「便所の落書き」)。広告機会も少ないし、膨大なトラフィックがサーバーを圧迫し、コストばかりが増大しています。

しかし、ここに来て積極的な企業参入が見られるようになり、事態は好転しつつあるように見えます。

名だたる有名企業が公式アカウントを開設し、新商品やキャンペーンの情報をつぶやくという格好の宣伝ツールとして活用されています。うまく話題になれば、バズマーケティング的なアレで、絶大な広告効果が期待できます。


でも、そんな、うまいこと行くかなぁ?


というのも、Twitterというのはユルさが売りであって、これほどユーザーが好き勝手やる環境も他にないと思うのです。例えば、興味がわかなければフォローしないし、面白くなければリムーブ(フォローを解除)します。話しかけられても返事しないことなんてザラだし、DMなんか見やしないってついったらーも少なくありません。

特に、企業からのアプローチなんてウザいだけでしょ。

だって、自分のプライベート晒してコミュニケーション楽しんでるところに、ビジネスライクで入ってこられてもさ…。

例えば、公式企業アカウントのモスバーガー。私はモスバーガー自体好きですが、このTL(タイムライン)はないわ。

@mos_burger

誰もフォローしていないのはともかくとして、誰に対しても@、RTしておらず、本当に一方的な独り言。こういうのを、世間では「データフィード」言います。一方的な情報発信で、ファンをないがしろにしたキャンペーンは、ミクシィにおけるNTTドコモが有名ですが、どのような結末になったかは皆さんご存知の通りです。Twitterでは、あのような激しい反応は無いと思いますが、無反応が一番怖いという一面も…。

話題のプラットフォームサービスに企業が侵入してきて、最終的に閑古鳥が鳴いたのはセカンドライフだけど、何となく同じ臭いがしますね。何となくで申し訳ありませんが。

もう一つ気になるところ。Twitterの日本法人的なポジションにある株式会社CGMマーケティングという会社(http://www.cgmm.co.jp/)。「CGMマーケティングの4つの強み」なるチャート表のところで「ネット上の発言監視、コミュニティの保守」とあります。これって、ひょっとして「囲い込もう」としてらっしゃる? 広告主にとって不都合なつぶやきは削除、とか? 今どきそんなことしたら、大やけどしますよねぇ。

あと、会社概要(http://www.cgmm.co.jp/company.html)を見てみると、セカンドライフに入れ込んでたあの広告会社が主要株主に入ってますね。 この辺も気になるところです。

せめて、セカンドライフと同じ轍を踏まないことを切に願います。セカンドライフも悪いサービスではないのに、一連の企業進出が失敗したことでブランドに大きな傷がつきましたから。

もっとも、フレンドリーに接することができる、近所の専門店みたいな企業が参入することには反対ではありません。質問や相談に丁寧に答えてくれて、コミュニケーションが成立するなら、Twitterほど有益なツールはありませんから。

Twitterの進むべき方向

Tweetup Tokyo 2009 Fall で、目玉企画の一つだった「ツイッター・ケータイ公式(Beta)」。あれ、皆さんはどう思いました? 「ウマレタ!」って、驚喜するつぶやきが目立ちましたが、私はちょっと違和感を覚えました。

え、「公式」?

携帯向けTwitterクライアントといえば、皆さんご存知movatwitterがあります。すでに携帯向けのデフェクトスタンダードと言えるポジションを確立しているサービスです。このサービスは、藤川真一さんという個人開発者の手によるもので、採算度外視の上、たいへんなご苦労と共に成り立っています(http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0909/18/news093.html)。

携帯天国と言える日本においては、これまでmovatwitterがTwitter普及に捧げた貢献は計り知れないものがあります。

そこへ、ただ本家が作ったというだけで「公式」を冠するサービスをぶつけてくるのは、あまりに不躾ではないでしょうか。

そもそも、同じAPIを使って制作されたサービスである以上「公式」も「非公式」も大差ありません。「公式」であっても、自社でサードパーティアプリを作ったようなものです。それをあたかも「こっちが本物」みたいな言い方でリリースするのはフェアではないと思いました。

皮肉なことに、現状まともに動いていないらしく、私は一度ログインしたきりアクセス不能、他のついったらーのレビューによると、自慢の絵文字もきちんと表示されないそうです。

「ツイッター・ケータイ公式(Beta)」のリリースには、Twitter(というかCGMマーケティング社)のもくろみが垣間見えていて、要するにTwitterにおける広告メディアの支配力を強めようとする意図が感じられます。

Twitterはほぼ全機能をAPI化しており、サードパーティは自由にクライアントソフトを開発できます。それがサービス全体の活性と成長を促進してきたのですが、一方でTwitter本体のメディア力を低下させる原因にもなっています。

例えば、TLのステータスを見るとわかりますが、現在、ほとんどのついったらーは、TwitterのWebページからは利用しておらず、サードパーティ製のクライアントソフトやOAuth(他のドメインにログイン権限を委譲する方法)で認証された外部サイトから閲覧・投稿しています。つまり、ほとんどのついったらーは、TwitterのWebページを見ていないのです。それは、すなわちバナー広告も見ていないことになり、広告ビジネスを進めようとするなら致命的と言えます。

そこで、(PCはひとまず置いといて)今後ますます増えるであろう携帯から利用者を「囲い込む」ために、「ケータイ公式」をリリースしたのではないでしょうか。

もちろん、Twitterの収益性はいち利用者としても気になるところです。このまま経営が傾いていき、サービス自体が崩壊するのは、私たちついったらーにとっても不幸な話です。それを回避するために、movatwitterのような優れたサードパーティアプリが打撃を被るのも、止むを得ないことなのかもしれません。

だって、本丸が崩れちゃったりしたら、どうにもならないもの…。

しかし、先にも述べた通り、そもそもこの広告ビジネスモデルって成功するの?という疑念があります。

サードパーティアプリに打撃を加えて、その結果、ついったらーの選択肢も狭め、おまけにTwitterのビジネスも失敗、なんてことになったら目も当てられません。

方向性自体間違ってるんじゃないの?と思ってしまうのです。

では、どのようなビジネスモデルが望ましいか?

現状を見る限り、ハッキリしていることがいくつかあります。

  • Twitterはプラットフォームであり豊富なAPIを公開しているということ。
  • 必要なのは、ユーザー増加に伴う混雑を解消するための、システム強化費用だということ。
  • Twitterは、メディア戦略が不得手で、少なくとも、ユーザーの大半をサードパーティに持って行かれているということ。

そしたら、答えは一つしかありません。Twitterはプラットフォーム屋としてシステムの強化・安定化に集中し、メディア戦略はサードパーティに任せるという住み分け。そのかわり、API使用に課金してサードパーティから収益を得るというビジネスモデルです。

ただし、全てを有料にすると、サードパーティ(特に個人)の参入障壁ができてしまうので、現実的には、トラフィックに応じて課金するような方法が望ましいと思います(ニコニコ動画みたいな感じ)。一部のサードパーティは、現状でもそれなりの利益を得ているようですから、トラフィックの多いAPIに対して課金するという方法は、公平性という点からも妥当と言えます。

そうすれば、有料APIを使ったサードパーティアプリは、より安定性の高いものとなり、新たなビジネスチャンスも生まれるかもしれません。

しかし、残念ながら、現状においては、そのようなビジネスモデルが実現する可能性は期待できません。

Twitterの日本法人であるCGMマーケティング社は、言わば広告業。Twitterがプラットフォームビジネスにシフトすると、彼らの仕事と儲けが無くなってしまうのです。片や米Twitterは、日本進出の窓口として、彼らの力を借りなくてはなりません(と思い込んでいる)。そうすると、旧態依然とした広告モデルが一番手っ取り早いということになってしまいます。

いっそ、CGMマーケティング社に、数あるサードパーティの一つとして事業展開させてしまえば良いんじゃないかと思います。しかし、そうすると、広告モデルがわかりにくくなって企業参入が消極的になるというリスクも。

CGMマーケティング社は、色々とメディア戦略を考えているみたいですが、どうなることでしょうかね? 今後の展開を見守りたいと思います。

Twitter[公式]ナビゲーター twinavi
(たいそうなページではないのですが、ここでも「公式」と表記しています。必死ですね)

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